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COLUMN 繊維コラム

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2020.07.16

”生地屋“の機能性解説 ~撥水(はっ水)素材とは?防水素材との違い~

<目次>
・撥水(はっすい)とは?-撥水と防水の違い- 
・撥水の“原理”
・撥水の“用途”
・撥水の“基準値”
・テキスタイル&アパレル マスダの“撥水ラインナップ”

 

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  お探しの生地・素材もきっと見つかります。
おしえて!マスダさん! ~こんな生地ないの?

■撥水(はっすい)とは? -撥水と防水の違い-

 「撥水(はっすい)」とは、生地に付着した水を球状にしてはじく加工です。撥水性があることで、生地自体が濡れてビショビショになることを防ぎ、付着した水を拭き取りやすい状態にします。

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 日常的に使用していたり洗濯することにより、撥水の効力が落ちていくことがありますが、この性能をより長持ちしやすくしたものが「耐久撥水」と呼ばれます。

 撥水素材の注意点としては、撥水加工だけでは環境などによっては水の浸み出しを防ぐことが出来ないという点です。生地(織物・編物・不織布)は糸を用いて作られており、糸の間に隙間がある為、長時間の雨や水滴の上から更なる圧力が加わるような環境(例えば、雪の上に座るような場合)の場合は、撥水加工だけでは水の透過を防ぐことは出来ません。「撥水」と混同されがちな言葉として「防水(ぼうすい)」という言葉がありますが、これは全く異なる機能です。「防水」とは「生地面に被膜を作り、水が生地の裏側へ浸み出すことを防ぐ」加工であり、撥水加工だけでは耐えられない部分を補完する加工と言えます。より軽い用途向けに撥水加工のみが施された商品は多くありますが、防水加工のみが施され撥水加工が施されない商品はあまり多くありません。理由は、水の浸み出しを防ぐために防水加工を施す場合には、生地表面に水が付着しづらい方が防水性の向上にも優位に働くためです。※防水素材・透湿防水素材についてはこちらで詳しく解説しています。

 ちなみに、油をはじく撥油機能もまた、撥水機能とは別のものです。水をはじく素材だからといって必ずしも油をはじくわけではありません。その為、微量な油分を含んでいたりする雨などの自然界の水分が付着することで、生地が本来持っている撥水性能を発揮させないこともあるのです。

■撥水の原理

 「撥水(はっすい)」というワードは、繊維の機能に関する名前の中でも知名度が高く、一般の方でも比較的なじみのある言葉ではないかと思います。しかし、当サイトでは、「撥水とは、水をはじく機能です」で済ますのではなく、もう少し掘り下げて「撥水」というものを解説してまいります。

 「撥水性がある素材」というのは、水滴を生地の表面に垂らした場合にコロコロと玉状になります。この原理をより正確に説明すると、繊維素材がそうさせているのではなく、水が本来持つ性質を引き出していると言えます。というのも、水分子(みずぶんし)は本来的に水分子同士が引き合う凝集力(ぎょうしゅうりょく)というものを持っており、水と触れる繊維(物質)が水の分子を引き寄せる力をより小さくすることで、水自身の持つ表面張力を発揮させ玉状にしているのです。逆に言うと、生地が濡れるという状態は、水分の表面張力よりも生地表面が水分を引き寄せようとする力が強くなった時に水分子が生地表面に吸着され広がった状態を言います。

撥水がかかっている状態:生地と液体の間に働く吸着力<液体の凝集力
撥水がきいていない状態:生地と液体の間に働く吸着力>液体の凝集力

 前述した「水をはじくことと油をはじくこととの違い」は、水と油で表面張力が異なることに起因しています。油は水よりも表面張力が弱く、生地表面が引き寄せる力に負けてしまいやすく、油は生地に染み込みやすいのです。水の表面張力は約70mN/m、油の表面張力は約20~30mN/mと言われています。その為、水をはじくからといって油をはじくとは言えませんが、油をはじくものは水もはじくというのが基本的な考え方です。(特殊なアプローチで撥油性能を発揮させている場合は合致しないかもしれません。)

<さらに深く>水はなぜ玉状になる性質があるの?

 水分中の水分子は、他の水分子から分子間力(ぶんしかんりょく)という力を受けています。水の中でも中心に近い水分子は、周囲の水分子からもほぼ同じ力を受けている為、比較的安定しています。しかしながら、水の中でも表面に近い水分子は、中心側の水分子から受ける分子間力と空気中に浮遊している分子から受ける分子間力とで力が異なり、不安定な状態にあります。その為、表面近くに存在している水分子は、自身の受ける力を安定させる為、中心側へと潜り込もうとする力が生まれます。その結果、液体の中で、表面積が最小となる球体になろうとする力が働くのです。この液体の表面積を最小にしようと中心側に集まろうとする力の事を「表面張力」と言います。
 水滴は触れる物質や、大気中の分子間力以外にも当然に重力の影響を受けます。水滴の体積が小さいうちはその質量も小さく、受ける重力よりも分子同士が引き合う分子間力(凝集力)が勝り水滴状を維持します。しかしながら、水滴の体積が大きくなるとその質量が大きくなり、重力の力が勝り、その結果、水滴の状態がつぶされていきます。

  生地の表面が水滴や水性の汚れをはじくためには、生地が水分子を引き寄せる力を下げる必要があります。そこで、染色加工後の加工として、他の分子を引き寄せる分子間力が極めて弱いフッ素系やシリコン系の加工剤を生地表面に被覆させます。そうすることで生地面に「撥水基(はっすいき)」と呼ばれる分子レベルの細かい突起物をたくさん作り、水滴をはじかせているのです。撥水基は目に見えませんが、細かい産毛のように並んでおり、撥水基が立っている状態であれば水滴は水の持つ表面張力が勝り、玉状になって流れ落ちていきます。しかし、汚れが付着したり、生地同士が摩擦を受けたりすることによって、撥水基が倒れていくと撥水効果が弱くなっていきます。

 

撥水基

 

<撥水についての最新情報>

 このフッ素系加工剤は、表面張力が最も低い「パーフルオロアルキル基(Rf基)」という構造をもった加工物を原料としており、シリコン系加工剤やワックスに比べても高い撥水性と耐久性を発揮します。しかしながら、21世紀初頭からこのフッ素系加工剤にわずかに含まれるPFOA(パーフルオロオクタン酸)という物質が、地球環境や人体へ悪い影響を与えているのではないかと指摘されるようになりました。その為、ごく微量のPFOAを不純物として含んだ8個以上の炭素で構成されるC8テロマー(Rf基の構造を有する化合物)を原料としたフッ素系加工剤(通称C8撥水剤)の使用は、2015年を境に使用されなくなっています。それに代わり、PFOAを含まない炭素数が6個のC6タイプの加工剤(通称C6撥水剤、あるいはPFOAフリー)ならびにそもそもフッ素を使わない非フッ素系加工剤(通称C0撥水剤、あるいはフッ素フリー)を使用した撥水素材へと切り替わっていっています。

 地球環境や人体への悪影響が懸念される以上はやむを得ないのですが、C8撥水剤に比べC6撥水剤は剤自体の撥水性能が劣る為、生地の撥水性を維持するにはより多くの加工剤を生地に付着させる必要が生じ、結果として風合いが変化したり、風合いを同じにしようとすると撥水性が低下するといった悩ましい問題も生じています。C0撥水剤については更に難易度が高く、手に付着したわずかな油などが生地に残ってしまったりするという課題もあり、加工技術の進化が待たれています。(当社の定番商品の撥水剤は全てC6タイプの撥水剤になっています。)

【最新情報】2021年10月22日(金)追記
 2019年5月に開催されたストックホルム条約第9回締約国会議において、C8撥水剤が廃絶対象物質として指定されたことを受け、日本でも2020年4月に「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)施行令の一部を改正する政令」が閣議決定され、同年10月22日(金)からC8撥水剤を使用した加工生地および製品の輸入が禁止されることとなりました。

【コラム】「撥水」の復活のさせ方とは?

 「お気に入りのアウターがあるけれど、近頃撥水力が弱まってきた・・・」と感じ、撥水スプレーをかけようと悩んでいる方、シミになるのが怖いですよね。又は、気に入っていて愛着もあるけど、あきらめて買い替えを検討されている方。“生地屋”ならではのメンテナンス方法を紹介します。
 レインウェアは、雨に多少濡れたからといってあまり洗濯しないという人がほとんどだと思います。しかし雨の中に含まれる汚れや、着用した時についた皮脂の汚れが撥水力に影響を及ぼしている可能性があります。ウェアの撥水性能は、上で述べたように「撥水基」の状態によって変わってきます。付着した汚れを落とし、熱を加えることで撥水基が起き上がり、撥水性能はある程度回復します。

 手入れする際の注意点としては、なるべく生地へのダメージが少ない方法で洗濯することです。1着程度あれば手洗いがベターです。洗濯機に入れる際は、生地同士の摩擦で傷がつかないように、ファスナーやボタン、マジックテープは閉じ、洗濯ネットに入れましょう。
また、洗濯後に洗剤が残ってしまっていると、生地の織り目を塞ぐこととなり、透湿性に影響が出てきますので、しっかりと洗剤をすすぐことも大切です。しっかり汚れを落とした後は、紫外線で生地やポリウレタンのフィルムが痛まないように、お風呂場などの日陰で吊干しにして乾かしましょう。乾燥させた後に、低温当て布でアイロンをかけるか、ドライヤーで温風を当てます。レインコートにアイロン?ドライヤー?と思うかもしれませんが、この熱が撥水基を復活させるのに重要なのです。
 ※素材によって、適正なメンテナンスの条件が変わりますので、必ず洗濯絵表示を参考にして下さい。特に、ポリエステルやナイロン素材は、高温の熱を当てると溶けて、商品を駄目にしてしまうので十分に注意して下さい。

 

 ■撥水の用途

・雨具(傘、雨合羽、レインコート)
アウトドア用品(タープ、テント)
 撥水機能といえば、まず雨具です。屋外でのスポーツや作業では、とっさの雨から体や衣服を守ってくれます。アウトドア向け、特に登山用品などは「山の天気は変わりやすい」と言われるように、いつ雨に打たれるか分からないため、撥水機能は必須です。ほぼ全てのアウトドア用品に撥水加工がなされています。これらの用途は、長時間雨に当たることも想定されているので、縫い目に止水テープがされていたり「(透湿)防水」加工も同時に施されていたりすることが大半です。

・ユニフォーム、エプロン
 
作業着には汚れがつきまとうものです。撥水機能があれば、水滴だけではなく水性の汚れもはじくことができます。(油汚れは別)汚れをはじくことで繊維に染み込みにくくなっており、サッと拭き取ることが可能です。作業着の清潔感を支えている機能の1つが撥水加工です。

・鞄、バッグ
 これらの用途は、中に収納している物を濡れないようにする役目があるので、撥水が必要になります。毎日洗濯機に入れて洗うものではない為、耐久撥水でなくとも撥水機能は長持ちします。

■撥水の基準値

撥水効果があるかどうかは、JIS L 1092に基づいて試験を行います。

◎撥水度試験(スプレー試験)
 
試験片となる生地を45℃に傾けた状態で器具に設置し、250mlの水を30秒間、シャワーのように散布します。軽く水滴を落とした後、目視で湿潤(しつじゅん)状態を比較します。

 その後、湿潤状態を確認し、以下の1(悪)~5(良)級のどれにあたるかを判断します。

 5級:表面に湿潤及び水滴の付着がないもの
 4級:表面に湿潤しないが、小さな水滴の付着を示すもの
 3級:表面に小さな個々の水滴状の湿潤を示すもの
 2級:表面の半分に湿潤を示し、小さな個々の湿潤が布を浸透する状態を示すもの
 1級:表面全体に湿潤を示すもの

 コート類の製品に撥水があることをうたう場合、JIS L 1092に規定されている洗濯処理(又はドライクリーニング処理)を3回行った後、撥水度試験で2級以上の結果が出なければ、撥水の明記ができません。(家庭用品品質表示法で規定)
 (逆に言えば、撥水と明記があるコート類の製品は、2~3回の洗濯で撥水機能が完全になくなってしまうことはないということです。)

 「耐久撥水」の場合、JIS L 1092撥水度試験(スプレー試験)の検査基準が厳しくなります。具体的には、前処理として水洗い処理30回 or ドライクリーニング処理10回を行い、水洗い処理後の場合は4級以上、ドライクリーニング処理後の場合は3級以上の湿潤状態であることが求められます。

■テキスタイル&アパレル マスダの撥水ラインナップの紹介

当社は撥水素材について業界随一のラインナップを誇っています。
一部をご紹介させて頂きます。( ▼ をクリックすると展開します。)

生地定番
ナイロン織物
(全38品番)
組織・原産地 加工 厚み(5段階)
ポリエステル織物
(全50品番)
組織・原産地 加工 厚み(5段階)
ポリエステル綿混織物(全2品番) 組織・原産地 加工 厚み(5段階)
ポリエステルニット
(全2品番)
組織・原産地 加工 厚み(5段階)

その他、合計90マーク以上の「撥水」生地定番を取り扱っています。

 

アパレル製品定番
メッシュベスト(ビブス) 素材
アウターウェア 素材
エプロン 素材
その他 素材

他にも、「撥水」機能付きアパレル製品定番を取り揃えております。

 

機能性に優れた上質な生地・アパレル製品を豊富にラインナップ。
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